ヴァイキングの飲酒用角杯
ヴァイキングがビールやミードを飲む際に使用した角杯
装飾や形状から日常的かつ儀礼的に使われた
出典:Mararie on Flickr(Author)/Wikimedia Commons CC BY‑SA 2.0より
「ヴァイキング」と聞くと、肉をむしゃむしゃかじり、酒をがぶ飲みしてるイメージがあるかもしれません。でも本当のところ、彼らの食生活ってどうだったのでしょうか?
実はヴァイキングたち、意外にもバランスのとれた食生活をしていたことが、考古学の発掘や文献調査からわかってきています。北欧の厳しい自然の中で、狩り・漁・農耕・家畜とさまざまな手段を駆使して食料を確保していたんです。
この記事では、ヴァイキング時代の食事の中身から食材の調達法、調理方法、そして宴会文化まで、わかりやすく解説していきます!
ヴァイキングたちは、過酷な自然環境のなかで生き抜くために、身の回りのあらゆる資源を工夫して活かしていました。狩りや農耕、漁業、そして採集といったさまざまな手段で食材を確保していたんです。ここでは、そんな彼らの暮らしぶりが見えてくる主な食材と、その入手方法を紹介しますね。
まず、タンパク源として重要だったのが家畜の肉と魚。ヴァイキングの家では、豚・牛・羊・ヤギといった動物が飼われていて、なかでも豚は脂がのっていて保存にも向いていたので、とっても重宝されたんですよ。ときには祝祭やお祭りのごちそうとして、豚の丸焼きなんかも登場したかもしれませんね。
一方で、海に囲まれた地域に住むヴァイキングにとって、漁業も日常の大事な仕事でした。ニシンやタラ、サケといった魚は、干物や燻製にすることで長期保存が可能になり、冬の間や遠征中の食料として大活躍していたんです。
寒さが厳しい北欧でも、根気強く耕作していたのがオオムギ・ライムギ・エンバク(カラスムギ)などの穀物です。これらはパンや粥にして食べるのが一般的で、今でいう黒パンやオートミールに近い料理があったとも考えられています。
とくにライ麦パンは、湿度や寒さにも強く保存性が高かったので、遠征に出かけるヴァイキングたちの“携帯食”としても重宝されたんですよ。
肉や穀物だけでなく、野菜や果物もちゃんと食べていたんです。自分たちで畑を耕して育てたり、森で採取したりしていました。キャベツ・玉ねぎ・カブ・ニンジンなどの根菜類は、煮込み料理やスープにして体をあたためる料理にぴったり。
また、リンゴやブルーベリー、クラウドベリーなどのベリー類は、野山に自生しているものを摘んで、そのまま食べたり、保存用に煮詰めてジャムのようにして使っていました。こうした保存食は、冬の食料が少ない時期にも助けになったんです。
さらに、ミルクやチーズ、バターといった乳製品もよく使われていました。家畜のミルクから作られるこれらは、貴重な栄養源だっただけでなく、パンに塗ったり煮込みに使ったりと調理の幅も広かったんですよ。
また、ハーブや野草も活用されていて、味つけや薬草としての役割も果たしていました。ただの食材だけじゃなく、健康や保存にも気を配った知恵がそこにはあったんですね。
こうして見ると、ヴァイキングの食生活は意外とバラエティ豊かで、自然の中で得られるものを無駄なく使いながら、とっても工夫されたものだったんですよ。
ヴァイキングの食生活をのぞいてみると、「意外とシンプル、でもちゃんと理にかなってる!」という発見がたくさんあります。派手なごちそうではないけれど、素材の味を活かしながら、生活の知恵を詰め込んだ調理法が中心でした。
もっともポピュラーだったのが煮込み料理。鉄製や陶製の鍋に、肉や野菜、穀物をぜんぶまとめて入れて煮込むスタイルが主流でした。これは一つの鍋で手間をかけずに栄養たっぷりの料理ができるし、火の管理もしやすくて、忙しい生活にぴったりだったんですね。
スープやシチューのようなものが多かったと言われていますが、そこに入れる材料はその日とれたものや、保存していた干物・燻製など。現代の北欧料理にも通じる「一皿で完結するあたたかい料理」が好まれていたようです。
もうひとつ定番だったのが、直火を使った調理。たとえば、骨付きの肉を串に刺して焚き火でじっくり焼いたり、魚や肉を吊るして煙でいぶして燻製にしたりといった方法です。
燻製は特に重宝されていて、寒冷な気候の中でも保存がきき、冬の間や遠征先での大事な食料になっていました。シンプルだけど、気候に合った合理的な方法だったんですね。
食卓で使われていた道具たちも、実用的で温かみのあるものばかり。木製のプレートやボウル、角(つの)で作られたスプーンやカップ、そして骨や鉄のナイフがよく使われていました。
フォークのような道具はあまり一般的ではなく、手やナイフを使って料理を切って食べるのが基本。もちろん今のように個別の食器が整っていたわけではないので、食事は質素だけど、みんなで囲むあたたかな時間だったのかもしれません。
お祝いの席や祭りのときには、装飾のある角杯や銀製の道具が使われることもあって、そんなときだけはちょっと華やかになることもあったようですよ。
このように、ヴァイキングたちの調理スタイルや食器文化は、自然に寄り添いながらも工夫に満ちていて、今の私たちが見ても学ぶことがたくさんあるんです。
ヴァイキングたちにとって、食事はお腹を満たすだけのものではありませんでした。仲間との絆を深めたり、神々や祖先に思いをはせたりする、特別な時間でもあったんです。そんな“食”と一体になった宴会(フェスティバル)文化には、ヴァイキング社会の価値観や精神がたっぷり詰まっていました。
まず欠かせないのがミード(蜂蜜酒)。これは蜂蜜と水を混ぜて発酵させたお酒で、甘くて飲みやすいのが特徴です。ヴァイキングたちはこのミードを、神々の飲み物として大切にしていたんですよ。
祝祭や儀式、戦いの勝利を祝う場では、たっぷりのミードが用意されて、大きな角杯や木製のカップで乾杯されていました。詩や神話の中にもよく登場していて、単なる飲み物以上の“神聖な存在”だったんですね。
日常的によく飲まれていたのは、麦から作った低アルコールのビールや、ヤギや牛の乳を発酵させたサワーミルク(酸乳)などの飲み物。これらは食事と一緒に飲むだけでなく、水の代わりとしても使われていたんです。
というのも、当時は飲み水が必ずしも清潔とは限らなかったので、ちょっとしたお酒のほうが安全で体にもよかったというわけですね。アルコール度数は今のビールよりもずっと低くて、子どもや年配の人が飲んでいたこともあったそうですよ。
ヴァイキングたちは、ただ食べて飲んで楽しむだけじゃなく、宴会そのものを「儀式」や「文化の継承の場」としてとても大事にしていました。
大広間(ロングハウス)に仲間を集めて、焚き火のあかりの中で酒を酌み交わしながら、英雄の物語を語ったり、即興で詩を詠んだりする。そうした場では、血縁や友情の誓いがかわされたり、次の戦いへの士気が高められたりしていたんですね。
しかもその詩や話は、若い世代へと伝わることで、文字を使わずに歴史や信仰が語り継がれていったんです。お酒と物語が、文化の橋渡しをしていたんですね。
宴会は、笑って、語って、酔って、そして心を通わせる――そんなヴァイキングたちの「生きる力」がつまった時間だったんです。
ヴァイキングたちの食文化はたしかに豊かでしたが、誰もが同じ食事をしていたわけではなかったんです。身分や財産、暮らす地域によって、その食卓にはけっこう大きな差があったんですよ。ここでは、社会階層ごとの食生活の違いを見てみましょう。
まず、首領や戦士のリーダー、あるいは土地をたくさん持っていた豪族など、地位の高い人たちはかなりぜいたくな食事をしていました。肉はもちろんのこと、遠征先で手に入れた香辛料やワイン、干した果物などの輸入品も使われていたんです。
とくにスパイスやワインは特別な存在で、「こんなに珍しいものが手に入る自分=すごい人!」という象徴にもなっていました。宴会では金属製の食器や飾りつきの角杯が並ぶこともあり、見た目にも華やかな食卓だったようですよ。
一方、ふつうの農民や漁民たちはというと、粥、黒パン、干物、乳製品などの質素なメニューが中心でした。けれど、これは決して貧しいという意味ではなく、自分たちで育てたり獲ったりしたものをうまく活かしていたということなんです。
とくに寒冷地での保存技術や、地域ごとの食材の使い方には工夫がいっぱい。場所によっては、魚や野菜の種類も豊富で、季節ごとに変化のある食卓だった可能性も高いんですよ。決して「つねに同じものしか食べられなかった」わけではなかったというのが最近の見方です。
そして、社会の底辺に位置づけられていたのが奴隷(スラヴ人や戦争捕虜など)たち。彼らの食事はというと、主人の残り物や調理くずを当てにすることが多かったようです。肉や乳製品などの栄養価の高いものにはなかなか手が届かず、食事の質にも身分差がくっきり表れていたんですね。
とはいえ、飢え死にするようなレベルではなく、働ける程度の食事は与えられていたと考えられています。中には技能や知識で信頼を得て、少し待遇が良くなるケースもあったようです。
ヴァイキングって、乱暴なイメージが先行しがちだけど、じつは工夫して豊かな食文化を築いていたんですね。自然と向き合いながら、食べることにも知恵と誇りをもっていた──そんな彼らのリアルな姿が、ちょっと見えてきた気がします。