ヴァイキングと貨幣経済

ヴァイキングの取引用の秤と分銅
ヴァイキング商人が銀や金の計量に使用した
出典：Berig（Author） / CC BY‑SA 3.0

 

ヴァイキングといえば戦士としての姿を思い浮かべる方も多いでしょうが、実は商業の面でもその手腕を発揮していました。中でも銀貨は、彼らの経済を支える基盤として非常に重要な存在でした。では、どのようにして銀貨が入手され、どのような価値があったのでしょうか。本記事では、ヴァイキングと銀貨の関係について詳しく見ていきます。

 

 

ヴァイキングの銀貨とは

ヴァイキング時代（8〜11世紀頃）、貨幣は主に貴金属、特に銀が重要な役割を果たしていました。ヴァイキングの経済は「重量貨幣経済」と呼ばれ、銀貨だけでなく、銀の腕輪や棒、破片も価値を測る手段として使われました。

 

銀貨は交易や略奪を通じて、アラブ世界やヨーロッパから得られ、とりわけアラブのディルハム銀貨は大量に輸入されていました。

 

ヴァイキングの銀貨入手方法

銀貨は略奪、交易、傭兵活動を通じて入手されました。ヴァイキングはヨーロッパだけでなく中東まで進出し、アッバース朝などの国々と交易を行いました。彼らが求めたのは金ではなく、純度の高い銀。理由はその高い流通性と信頼性です。

 

略奪および貢納金

ヴァイキングはしばしばヨーロッパ各地の都市を襲撃し、略奪や貢納金として銀貨を獲得しました。彼らが求める銀は、征服活動の大義名分の一部だったのです。

 

交易品と引き換え

戦略的に配置された交易拠点では、毛皮、海産物、奴隷といった商品と引き換えに銀貨が手に入りました。特にバルト海沿岸は交易の一大拠点でした。

 

傭兵活動による報酬

ヴァイキングは傭兵としても雇われることがあり、その報酬として銀貨を受け取ることが少なくありませんでした。「ヴァリャーグ」が代表例ですが、彼らの秀でた戦闘能力はヨーロッパ諸国において重宝されたんですね。

 

ヴァイキング文化における銀貨の価値

銀貨は単に物資のやりとりに使われるだけでなく、社会的な地位を示すものでもありました。富を誇示するために身につけたり、埋葬時に重要な品として添えられたりすることがありました。銀は命脈を保つ象徴であり、繁栄と経済的安定の代名詞でした。

 

富の象徴

銀貨は富の象徴であり、交易の成功を意味しました。これにより、ヴァイキングはその財力を周囲に誇示しました。

 

美術品・宗教的祭器

銀はしばしば装飾品や宗教的な祭器として加工され、文化的な価値もありました。これにより銀は純粋な貨幣の枠を超えて人々の心をつかみました。

 

埋葬品

銀貨は埋葬儀礼にも用いられ、来世における旅費や財産として重要視されました。このように、銀はヴァイキングの生活と信仰の一部を成していました。

 

経済的基盤

ヴァイキングの経済は銀貨に支えられたもので、ヨーロッパ全体の経済にも影響を与えました。銀貨による交易ネットワークの拡大は、新しい市場の開拓や他文化との融合をもたらし、欧州圏交易の隆盛に火をつけたともいえます。