ヴァイキングっていうと「斧を振り回してる戦士たち」というイメージが強いかもしれません。でも実は、彼らが使った武器は意外と多彩で、戦場や状況に応じてちゃんと使い分けていたんです。今回は、そんなヴァイキングたちが駆使した代表的な武器について、ひとつひとつ見ていきましょう!
まずはヴァイキング戦士の定番アイテムを紹介。実用性だけじゃなく、持ち主の地位や誇りも反映されていたりします。
もっとも象徴的なのが斧。農具としても使えるこの道具は、製造が簡単で安価だったため、庶民戦士の定番でした。なかには戦闘用に特化した長柄の両手斧もあり、これで盾ごと相手をぶち壊すという荒々しい戦い方もあったんです。
また、斧は単に武器というだけでなく、トール神との結びつきも強く意識されていました。ミョルニルを振るう神にあやかって、戦士たちは「神の力」を斧に宿す思いで戦場に赴いたとも言われています。
いわゆる“かっこいい武器”。でも、鉄をたくさん使ううえに、鍛冶の技術も要るので超高級品。持っていたのはヤールなどの上級戦士が多かったです。刃渡りは70~90cmほどで、両刃の直剣が主流でした。
剣には名前がつけられることも多く、代々受け継がれる家宝のような扱いでした。刀身に模様や銀線が施されていたり、装飾された柄(つか)を持っていたりするものもあり、まさに「力と名誉の象徴」だったのです。
近接も遠投もできる万能武器。木の柄に鉄の穂先をつけただけのシンプル構造ですが、安価かつ量産可能で、歩兵の主力装備でした。「オーディンが愛した武器」ともされていて、神話的なイメージもあるんですよ。
とくに突撃の際は盾の隙間から槍を突き出す「槍壁戦術」(シールド・ウォール)が効果的で、組織的な戦いにおいて欠かせない装備でした。さらに熟練兵になると、投擲槍(スローイング・スピア)を活用し、奇襲や迎撃にも柔軟に対応できたといいます。
ヴァイキングの槍の先端(スウェーデン歴史博物館)
ヴァイキングにとって槍は最も一般的な武器であり、投擲にも接近戦にも使える実用性と、主神オーディンの神槍グングニルに象徴される神聖性を兼ね備えていた
出典:Neijman, Maria, Historiska museet/SHM(Author) / CC BY 4.0
ヴァイキングの武器は、「戦うための道具」であると同時に、その人の身分や信仰、誇りを映し出す“戦士の顔”でした。斧、剣、槍──どれを持つかで、その戦士の物語が語られていたのです。
攻撃だけじゃなく、防御も大事!ということで、ヴァイキングたちはちゃんと装備を整えて戦いに挑んでいました。
基本は丸型の木製盾で、中央に鉄製のボス(握る部分)がついています。直径は80~90cmくらい。盾を密集させて敵の矢を防ぐ「盾の壁(シールド・ウォール)」という戦法にも使われました。
この盾は戦術の中核ともいえる存在で、単なる防御道具というよりも「仲間と連携して戦う」ための装備でした。中には装飾が施された盾もあり、部族や家系を示すシンボルとして使われたケースもあるんですよ。
じつは「角付き兜」は完全に創作。実際はシンプルな鉄製のヘルメットが主流で、額と鼻を守る金属製の補強があるものも。戦場では視界の確保と軽さも重要だったんですね。
鼻の部分を守るナザルバー付きのタイプがよく見られ、顔全体を覆うようなデザインは少なめ。兜の内側には布や革を詰めて衝撃を吸収する工夫もされていました。
上級戦士は鎖帷子(チェインメイル)を着ていた記録がありますが、かなり高価でした。一般兵は革のジャケットや厚手の布で代用することが多く、防御力はあまり高くなかったかもしれません。
チェインメイルは、鉄の輪を1個1個つないで編み込んだ手の込んだ装備で、刃を通しにくい点で優れていました。ただし重さもあるので、素早い動きを重視するヴァイキングにとっては、バランスをとる必要があったのです。
ときには毛皮やウールを体に巻いて寒さと攻撃を両方防いだり、革の腕当てやすね当てといった部分的な防具をつけたりする工夫も見られました。
また、戦闘前には武具に祈りを込めたり、ルーン文字でお守り的な刻印を入れたりすることもありました。つまり防具には、実用性と同時に精神的な加護も期待されていたわけです。
盾・兜・鎧――それぞれの装備は、敵の攻撃を防ぐだけでなく、戦士としての誇りや信仰も映し出していました。ヴァイキングにとって防具とは、身を守るだけでなく「戦う心を整える道具」でもあったのです。
意外と知られてない、ちょっとマニアックなアイテムもあります。
近距離で相手に投げつける斧。コンパクトに作られていて、投擲にも向いていたタイプです。威嚇や混戦時の初撃などにも使われました。命中すれば致命傷にもなり得る他、敵陣に斧が飛び交うだけで、心理的にも大きなプレッシャーとなったようです。
サブウェポンとして常備。戦場以外でも日常的に調理・作業用として使われていたので、腰にひとつはぶら下げていたそうです。
「セクス」と呼ばれる片刃のナイフが特に有名で、短剣としても使えるし、木や革を切ったり、獲物をさばいたりと用途は多彩。戦闘においては、万一メイン武器を落とした時の最後の手段としても活躍しました。
城砦への攻撃などでは火を使った矢や簡易投石機も活用されていた形跡があります。とくに後期の襲撃では、戦術が洗練されていったんですね。
火矢は、乾いたわらや布を巻き付けて点火する簡易型が多く、木造の建物や防壁を炎上させるのに使われました。また、簡易的な投石機は船に積んでおくこともあり、小型の砲撃装置として使われていたとも考えられています。
物理的な武器ではありませんが、戦闘時にルーン文字が刻まれた護符や獣の骨・歯などを身につけていた例もあります。これらは神々の加護を得たり、敵を威圧したりする精神的な戦闘道具のような役割でした。
とくにオーディンやトールの象徴を刻んだアイテムは人気で、敵に「神の加護を受けている」と思わせるだけでも心理的に優位に立つことができたのです。
ヴァイキングは、野蛮なだけの戦士じゃなくて、意外と装備に気を使った“実戦派”だったことがわかります。武器ひとつ取っても、経済状況や社会構造が垣間見えるのが面白いところですね!