ヴァイキングの食事・生活

ヴァイキングの食事・生活

この記事では、ヨーロッパ史の中でヴァイキングの日常生活に焦点を当てています。海の民としての彼らの生活様式、食事、家族構造、文化的な側面に迫り、その多面的な日常について詳しく探っていきましょう。

ヴァイキングの暮らし

ヴァイキング時代の日常生活を描いたファロー諸島の切手シート

バイキングの暮らし
フェロー諸島(デンマーク自治領)の郵政庁が発行した、ヴァイキング時代の日常風景を描いた切手3種

出典:Martin Mörck / Public Domain

 

戦場で暴れ回る姿ばかりが語られがちなヴァイキングたち。でも実は、彼らの本当の顔は「戦士」だけじゃなく、「農民」であり「職人」であり「家族持ちの一市民」でもあったんです。
つまり、ヴァイキングの本質は“暮らしの延長線上にある冒険”だったと言えるかもしれません。

 

この記事では、そんなヴァイキングの暮らしに注目して、家のこと、食のこと、仕事や娯楽、そして家族との関係まで、日常に根ざした姿をわかりやすく解説していきます。

 

 

住まいと集落

ヴァイキングの生活の基盤は、山や森に囲まれた自給自足の集落でした。

 

ロングハウス

一家が暮らす建物はロングハウスと呼ばれる長方形の木造家屋。壁は木の板や泥、藁で補強され、屋根は草で覆われていました。家の中央には炉があり、調理や暖房、照明をすべて兼ねていたんです。煙突はなく、煙は屋根の隙間から抜けていくというワイルド仕様。

 

集落の構成

ロングハウスが点在する小規模な村落を形成し、周囲には畑や家畜小屋、共同井戸がありました。村ごとにリーダー(ヤール)がおり、重要なことは評議会(ティング)で決めるという合議制も特徴です。

 

食事と家事

毎日のごはんや家庭のことは、ほとんどが“家族で分担してこなす”スタイルでした。

 

主食と副菜

パンや粥、スープが基本。穀物(大麦・ライ麦)をベースにした食事で、野菜はカブやネギ、豆類などを栽培。副菜として燻製や塩漬けの魚、羊・豚・鹿の肉なども登場します。保存技術が大事だったので、干す・燻す・漬けるは生活の知恵そのもの。

 

家庭の役割分担

男は農耕・狩猟・遠征、女は家事・育児・畑仕事と分業制。女性の地位は意外と高く、家の鍵を管理する“家の主”として尊重されていました。女性が財産を所有したり、離婚を申し立てたりする権利も持っていたんです。

 

衣服と身だしなみ

「野蛮」どころか、実はかなり清潔でオシャレだったヴァイキングたちの見た目事情をチェック。

 

衣類

男性はチュニックにズボン、女性はストラップドレスにエプロン。素材はウールやリネンで、冬は動物の毛皮も着用。ブローチや刺繍を使って、階級や個性を表現する文化もありました。

 

整髪と装飾

男性は長髪や編み込み、女性は髪飾りでおしゃれを楽しんでいたようです。さらに毛抜き、耳かき、櫛、ピンセットといった“身だしなみセット”が墓から出土していることもあり、清潔志向はかなり高かったことがわかります。

 

仕事と娯楽

日々の労働とちょっとした楽しみ、それがヴァイキングの日常を彩っていました。

 

農業と手工業

畑仕事を中心に、動物の飼育(牛・羊・山羊など)も大事な仕事。鍛冶屋や木工職人もいて、船、武器、家具、宝飾品などを自分たちで作っていました。とくに鉄器と木工の技術は非常に高かったといわれています。

 

ゲームと詩作

娯楽としては、ボードゲーム(ハネファタフル)や武術の訓練、歌や詩の朗読が人気でした。とくにスカルド詩人と呼ばれる人々は、即興で英雄詩を作って披露する“口頭芸人”として尊敬されていたんですよ。

 

戦ってる時のイメージばかりが強いけれど、ヴァイキングたちは、毎日の暮らしをしっかりと築いていた“生活者”でもあったんです。自然と向き合い、工夫して、仲間や家族と支え合いながら生きていた彼らの姿にこそ、本当のたくましさがあったんじゃないでしょうか。